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【社労士監修】雇用契約書と就業規則の必要性について

個人事業主の方でも法人の方でも、自身の事業において何らかの契約書を交わすことがあると思います。例えば事務所を借りたら賃貸契約、ガス水道など光熱費の契約、仕入れ先や顧客との契約書や、弁護士や税理士、社労士との顧問契約などがあると思います。

では、人を雇用することとなった場合は、どんな契約が必要になるのでしょうか?

今回は人を雇用することとなった場合において、事業主としてはどんな契約や社内ルールを決めなければならないかを、お伝えしたいと思います。

雇用契約(労働契約)と、その他の人にまつわる契約について

雇用契約

雇用契約とは、その雇用区分が正社員でもアルバイトでも、働く時間がフルタイムでも週1日の勤務でも、事業主が直接労働者を雇用し、その指揮命令のもと労働者が労働を提供し、その対価として事業主が賃金等の労働の対償を支払うものをいいます。

雇用契約(労働契約)を締結することで、労働基準法や労働契約法などが適用され、事業主はそれら法律を遵守する義務が発生し、労働者はそれら法律に守られることとなります。ちなみに労働契約という言葉もありますが、雇用契約とほぼ同じと考えて問題ありません。

業務委託契約

企業が雇用している従業員以外の第三者に、業務を委託する契約となりますが、法律的に規定されているものではなく、「請負契約」と「委任(準委任)契約」を総称した概念として使用されていることが多いようです。

業務委託契約については、雇用契約ではありませんので、労働法令の適用からは外れますが、労働者であるかどうかはその締結している契約形態ではなく、業務の実態で判断されます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

労働者派遣

企業が社外の労働者を受け入れて利用する形態の一つでありますが、派遣元企業と派遣先企業が、企業間の契約である労働者派遣契約を締結し、派遣元が、労働契約上の雇主としての賃金支払義務等の基本的義務を負担し、派遣先は派遣労働者とは直接の契約関係を持たず、派遣先労働者に指揮命令し、その労務の提供を受ける関係にあります。

以上のように人にまつわる契約はさまざまありますが、今回は、事業主が雇用契約をした場合についてご説明していきたいと思います。

雇用契約(労働契約)を締結する前に、知っておくべき原則

近年、就業形態の多様化や個別労働紛争を未然に防止することなど、労働者の保護を図りながら個別の労働関係の安定に資するために、平成20年3月から労働契約法が施行され、労働契約についての基本的なルールが明らかにされています。

わかりやすい言葉でお伝えすると、労働契約を締結・変更するときは、「労使が対等の立場で合意している」こと、正社員や契約社員といった雇用区分ではなく、「就業の実態」によること、また育児や介護などその労働者が抱えている問題に対して「考慮している」こと。また、その締結した労働契約は、「労使共に遵守し、信義に従い誠実に権利を行使及び義務を履行する」こと、また、「労使共に労働契約に基づく権利行使の濫用は許されない」、という原則があります。

事業主には労働条件の明示義務がある

労働基準法第15条では、使用者は労働契約を締結する際には、必ず労働者に労働条件を記した「労働条件通知書」の交付を義務としています。交付については書面で行うことが一般には多いようですが、従業員が希望した場合には、書面以外にFAX、電子メール、SNSなどでも明示できるようになりました。

労働契約は、お互いが合意すれば口約束でも成立します。しかしそのような契約は後々のトラブルに発展する可能性もあります。

労働条件についてはその内容を明示することが義務ですので、契約書に署名をすることまでは義務ではありませんが、後々のトラブルを発生させないためにも、「雇用契約書兼労働条件通知書」を作成し、会社・従業員双方の署名・押印などをしっかりと残しておくこともご検討ください。

労働条件の明示内容

明示しなければならない労働条件については、「必ず明示しなければならない項目」「制度があるなら明示しなければならない項目」があり、それらについて「書面等での明示が必要」なものと「口頭の明示でも可」に分かれています。

必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」(原則は書面等での明示が必要)

・労働契約の期間
・就業の場所・従事する業務の内容
・始業・終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間
・休日
・休暇
・交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
・賃金の決定・計算・支払方法
・賃金の締切り・支払の時期に関する事項
・退職に関する事項(解雇の事由を含む)
・昇給に関する事項(昇給についてのみ、口頭の明示でも可となります)

事業場内に制度があれば明示しなければならない「相対的明示事項」(すべて口頭での明示で可)

・退職手当の定めが適用される労働者の範囲
・退職手当の決定
・計算・支払の方法
・支払時期に関する事項
・臨時に支払われる賃金
・賞与などに関する事項
・労働者に負担させる食費
・作業用品その他に関する事項
・安全・衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償
・業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰
・制裁に関する事項
・休職に関する事項

具体的な労働条件の明示とは?

従事する業務

「営業事務」など職種の記載に加え、その業務内容についても記載します。例えば、受発注業務、電話やメール等での問い合わせ対応業務、専用端末への入力業務、請求書発行業務、入金消し込み業務などです。 「聞いていた業務内容と違っていた」「私の仕事ではありません」など、認識齟齬による労使トラブルを防ぐためにもどんな仕事をするのかわかりやすく記載した方が安心です。

始業・就業・休憩時間

例えば飲食店などシフト制勤務の場合によくあるのが、「シフトによる」という記載や、「7:00〜20:00の間で8時間」「休憩60分」と記載してあるだけの労働条件通知書や雇用契約書です。これだけですと、具体的に何時から何時まで働けば良いのか、また何時から休憩が出来るのかが全くわかりません。

あらかじめいくつかのシフトパターンと休憩時間をきちんと「○時〜○時」という記載方法で明示することが必要になります。

賃金の決定・計算・支払方法

賃金については、月給、日給、時給などの区分、基本給や定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給に関する事項などについて明示する必要があります。また、固定残業代の制度を採用している場合は、基本給と固定残業代を合計した金額ではなく、

・基本給と固定残業代がそれぞれいくらかがわかるような記載

・固定残業時間は何時間分であるか

・それを超える場合は割増賃金を支給する

など、基本給と時間外労働に対する割増賃金について明確に区分できるような記載の必要があります。

例えば、年収400万という書き方や、手取り25万円という記載では、賃金について明示したことにはなりません。

・基本給20万円、固定残業代5万円(時間外労働30時間分)

・30時間を超える時間外労働については、その時間分を別途支給

(法定時間を超える場合の賃金は25%増し、深夜22時〜翌5時までの時間帯は25%増し、法定休日労働は35%増し)

というような記載が必要となります。

いくつかの具体的記載例をご紹介しましたが、労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮に加え、職場環境を含め具体的かつ詳細にその労働条件を明示するような配慮をする必要があります。

決めた労働条件を変更するのにはルールがある

労働契約はさまざまな理由で変更することがあると思います。その方の担当業務の変更や会社全体での賃金や勤務体系の変更など、労働条件の変更に伴い、新たな契約の締結が必要な場合があります。労働条件が有利になる場合もあれば、不利になる場合もあります。不利になる場合はトラブルになるケースもありますので、慎重に進める必要があります。

会社が一方的に変更するなどは、不利益変更となるため、原則でお伝えした「権利の濫用」にあたるので、簡単には変更はできず、その変更には合理性があるかどうかや、不利益変更になる場合は、一定の手続きを経て変更しなければなりません。社労士や弁護士など労働法の専門家に相談しながら変更を行うことをおすすめします。

また、 労働条件変更について、従業員それぞれ個別に同意を得て、労働条件通知書を明示し、雇用契約書を締結していたとしても、労働者が解雇を恐れて実は断れなかったなどの事情が後に発覚すれば、労働者の自由な意思に基づいて締結したと認められず、その変更は無効となります。また、労働条件の変更については、不利益はもちろん、有利になる変更であっても、労働者の同意を得ることが必要となります。

労働条件通知書/雇用契約書に加えて、就業規則を作成する必要性はある?

トラブルを回避するためにも、労働条件についてはきちんと明示しなければなりませんが、労働条件通知書などでは記載しきれないルールもあると思います。そういった場合は、就業規則を作成することをおすすめします。

就業規則は労働者の雇用形態、勤務時間等に関係なく、常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則の作成・届出義務が生じます。一方で、常時10人以上の労働者がいない場合でも、働く上でのルールは会社規模に関わらずありますよね。社会的なコンプライアンスに対する意識の高まりから、10人に満たない会社でも、就業規則を作成する会社が増えてきています。

例えば、労働条件通知書の絶対的記載事項については、解雇の事由についても記載することが定められていますが、この記載があれば解雇が容易にできると言うわけではありません。

もちろん就業規則があれば解雇が容易にできるというわけでもありませんが、服務規律や懲戒の事由、懲戒の種類などがある程度具体的に記載されていることに加え、その就業規則の内容が労働者に周知されていることなどが過去の労働判例では重要視されています。

働く方全員に共通するような項目については就業規則に記載し、労働条件通知書などには「その他事項については就業規則による」など委任規定を入れておくと言う方法などもあります。就業規則は多くなると100条にも及ぶこともありますが、中小事業主の事業場であれば、20〜30条程度のものを作成してみるもの良いと思います。

ただし、一度作成した就業規則については、気軽に変更ができるものではありませんので、その内容については吟味する必要があります。

労働条件の明示や雇用契約書、就業規則を作成するには?

自社内で行う場合は、本来の正しいルール理解に加え、法改正に対応した手続きなど専門的な知識が必要となります。どこまで何が必要なのか?過不足があるかどうかなどよくわからない、調べる時間もないという方は、社会保険労務士にご依頼ください。

顧問契約を必須とする社会保険労務士もいれば、顧問契約なしで、スポット受託可能な社会保険労務士の方も一定数います。わからないところだけを相談・依頼する、という方法もあると思います。

社会保険労務士を探すことや、打ち合わせをする時間がないが、すぐに準備したいなどの要望には、スポット手続きのWEBサービスを利用するのも良いと思います。例えば日中は自社の業務で手一杯である方などにとって、業務時間外に手続きの依頼をしたい時などに便利です。WEBサービスは24時間好きな時間にご自身で情報入力をしていただき、その情報をもとに雇用契約書の作成や、届出等の手続き代行を行なうサービスですので、事業主の手間を省き、更なる業務効率化が期待できます。

ご自身の事業やお考えにあったスタイルで対応可能かどうかを、まずはご相談されると良いかと思います。

いかがでしたでしょうか?

人を雇用する際の労働条件の明示や契約について、ご理解いただけましたでしょうか。

労働条件や働く職場のルールについて、曖昧にしておくことで、トラブルに発展してしまうこともありますが、その都度考えたり決めたりすることもお忙しい事業主の皆様には、大変負担となるのではないでしょうか。また、労働者にとっても「自分の労働条件や職場のルールが曖昧でよくわからないこと」は、ストレスの1つとなり得ます。

労働条件や働く職場のルールをあらかじめ決めることは、誤認や過大な期待などの認識のずれを無くし、労使共に気持ちよく働くことにつながります。

また、人手不足の昨今、報酬の高さだけでは人が集まりません。労働環境を整備することが、欲しい人材の採用や人材の定着には不可欠となっております。働き方の柔軟性や透明性、公平性が非常に求められている今だからこそ、自社の労働条件や労働環境を見直してみませんか?

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この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

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