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【社労士監修】事業主の義務である従業員への健康診断に関して

しゃろねこ
しゃろねこ

事業主の皆さん、職場で従業員の方への健康診断は毎年実施していますか?雇い入れ時の健康診断は実施していますか?人を雇用しているのであれば、事業主は労働者安全衛生法において従業員に対して健康診断を実施することは義務となっています。また、従業員に対する健康診断は事業所の規模(例えば従業員が3名など小規模である等)は関係がなく、小規模でも一人でも該当者がいれば健康診断を実施しなければなりません。

今回は、健康診断について、誰にどのタイミングでどんな健康診断を実施しなければならないのか、確認して参りましょう。社会保険労務士が詳しく解説いたします。

雇用する従業員に対し健康診断が必要なのはなぜか

従業員個人の健康がなぜ事業主に関係があるのか、そんなことは個人が考える事で事業主には関係がないのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。

労働契約においては、雇用される従業員は事業主の指揮監督下で指示をされた業務を決められた時間で行い、その労働の対償として報酬を受け取るわけですが、そもそも仕事を指示する際に、その雇用する従業員の健康状態を把握しておかなければ、就業上必要な措置を講ずることができません。

健康状態に懸念があれば仕事を休ませることや、別の仕事に異動させることなどが、労働者の安全と健康を確保することと言えます。

労働者の健康状態を把握せずに業務に就かせたことで、労災事故が発生してしまうこともありますし、症状がさらに悪化することもありますから、事業主にはその雇用する従業員に対し健康診断を実施し、その健康状態を把握する必要があります。

定められた健康診断を実施しない場合は、罰則がある

事業主にはそれぞれ健康診断の実施が「労働者安全衛生法」に義務付けられていますが、もしこれらを行わなかった場合は、労働者安全衛生法第120条により50万以下の罰金に処されることがあります。

労働基準監督署の調査や労働者からの通報で発覚することもありますので、そうなる前にきちんと整備を行い、必ず実施しましょう。

労働基準法から派生した「労働者安全衛生法」の概要

労働基準法は労働条件の最低基準を定めたもので、昭和22年に制定されています。

労働者災害補償保険法も業務上の事由や通勤における疾病等に関する補償を定め、同じく昭和22年に制定されています。

その後、労働基準法に定められていた安全衛生に関する項目については、昭和47年に労働者安全衛生法となり、労働基準法から派生して制定されることとなりました。その内容とは、

①危険防止基準の確立

②責任体制の明確化

③自主的活動の促進

となり、これらにより労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とされています。

在留資格別の前年増加率では技能実習が2位

日本で働く外国人労働者は在留資格が必要となりますが、在留資格別の状況では内訳を見てみると、「身分に基づく在留資格(永住者や日本人の配偶者等)」が全体の30%程度、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」が全体の29%程度とほぼ同数です。

「技能実習」は20%と3番目ですが、前年からの伸び率では「専門的・技術的分野の在留資格」が最も大きく全体の24%強となり、次いで「技能実習」が20%強となっており、技能実習の方が増加傾向であることが分かります。

「職場における安全衛生」とは?

「安全」や「衛生」と聞くと、何か特殊な業種のようなイメージをお持ちになる方もあるかもしれません。例えば建設現場などで重機を扱うような危険が発生しやすい事業や、医療などの保健衛生に厳しい事業など。

当然ですが職場における安全衛生とは、特殊な業種だけに定められたものではありません。

事業主は、労働安全衛生法に基づき、以下の措置を講じることが必要です。

①安全衛生管理体制を確立するため、事業場の規模等に応じ、安全管理者、衛生管理者及び産業医等の選任や安全衛生委員会等の設置

②事業主や発注者等は、労働者の危険または健康障害を防止するための措置

③機械、危険物や有害物等の製造や取扱いに当たっては、危険防止のための基準の遵守

④労働者の就業に当たっては、安全衛生教育の実施や必要な資格の取得

⑤事業主は、作業環境測定、健康診断等を行い、労働者の健康の保持増進を行う

⑥事業主は、快適な職場環境の形成に努める

事業主が実施しなければならない健康診断の種類について

では、事業主が雇用した従業員に対し行わなければならない健康診断はどんなものがあるのでしょうか? 健康診断の種類は大きくわけて以下の通りとなります。

①一般健康診断

②特殊健康診断

それぞれの健康診断について、詳しく見ていきましょう。

一般健康診断の種類と実施のタイミング

一般健康診断の実施が必要となるときは、以下の通りです。

①雇い入れ時健康診断(労働者安全衛生規則第43条)

常時使用する労働者(一定のパートも含む)を雇い入れる直前または直後に実施する健康診断のことをいいます。

②一般健康診断(労働者安全衛生規則第44条)

常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断のことをいいます。

③特定業務従事者健康診断(労働者安全衛生規則第45条第1項)

こちらの健康診断は労働安全衛生規則第13条1項第2号に掲げる以下の業務(※1)に従事する労働者が対象となる健診のことをいい、6か月以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断を受診させる必要があります。

(※1)労働安全衛生規則第13条1項第2号に掲げる業務

多量の高熱物体を取り扱う業務または著しく暑熱な場所での業務

多量の低温物体を取り扱う業務または著しく寒冷な場所での業務

ハラジウム放射線、エックス線、その他の有害放射線にさらされる業務

土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所での業務

異常気圧下での業務

岩石切削機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

重量物の取り扱い等の重激な業務

ボイラー製造等で強烈な騒音を発する場所での業務

坑内での業務

深夜業を含む業務

有害物を取り扱う業務

有害ガス等を発散する場所での業務

病原体によって汚染のおそれが著しい業務

・その他厚生労働大臣が定める業務

・「深夜業」が含まれる点に注意

労働安全衛生規則第13条1項第2号に掲げる業務(※1)には、一般的ではない特殊な業務が多い印象ですが、その中には深夜業を含む業務に従事する労働者も対象となっている点に注意しましょう。

・「深夜業」とは

深夜業とは、午後10時から午前5時までの勤務を1週に1回以上又は1月に4回以上行う方が対象となるため、例えば飲食店やカラオケ店等で深夜営業をしている事業で深夜の時間帯に従業員を働かせている場合や、運送業やタクシー業などで、同時間帯に労働者に自動車を運転させている場合などが該当します。

④海外派遣労働者の健康診断(安全衛生規則第45条の2)

海外に6か月以上派遣労働者を対象に行うもので、派遣する前及び帰国後国内業務に就かせる場合に実施します。

⑤給食従業員の検便(安全衛生規則第47条)

事業に付随する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、雇い入れの際や配置替えの際に実施します。

一般健康診断の受診対象となる従業員は?「常時使用する労働者」とは誰?

健康診断は正社員だけではなく、以下①および②の要件を満たせばパートやアルバイトの方も該当しますので、受診対象者の範囲にも気を付けましょう。

①使用期間

・一般業務従事者は1年以上使用される予定の方

・特定業務従事者(安全衛生規則第45条関係)は6か月以上使用される予定の方

②労働時間

同種の業務に従事する労働者の1週間の所定労働時間数の3/4以上であること

(※同種の業務に従事する労働者の1週間の所定労働時間数の3/4未満である労働者であっても、おおむね1/2以上である者も健康診断の実施が望ましいとされています。)

一般健康診断の検査項目について

一般健康診断には受診必要項目が以下の通り定められています。

①既往歴及び業務歴の調査

②自覚症状及び他覚症状の有無の検査

③身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

④胸部エックス線検査及び喀痰検査

⑤血圧の測定

⑥貧血検査

⑦肝機能検査

⑧血中脂質検査

⑨血糖検査

⑩尿検査

⑪心電図検査

(一般健康診断以外)特殊健康診断、じん肺健診、歯科医師による健診とは

有害な業務に常時従事する労働者に対して行う健診となります。

たとえば屋内作業場における有機溶剤業務に常時従事する場合や、放射線業務に常時従事する場合など、有害な物質を扱うような業務に常時従事する労働者に対しては、前述した一般健康診断の項目とは異なるそれぞれ特別の健康診断を実施しなければなりません。

原則として雇い入れ時、配置換えの際及び6か月以内ごとに1回(じん肺健診は管理区分に応じて1~3年以内毎に1回)

健診費用の取り扱いについて

前述したいずれの健康診断を実施することは法律で事業主に義務づけていることから、これら法定健康診断はその費用を事業主が負担することとなっており、一般健康診断でも特殊健康診断でも同様の扱いです。(昭和47年9月18日基発第602号通達参照)

ただし、前述した項目以外の健診項目にかかる費用について事業主が負担をする必要はありませんし、健診後に要精密検査となった場合の再検査の費用についても同様に、事業主が負担する必要ありません。

健康診断はどこで受診したらいいのか?

必要な項目を検査してくれる医療機関であれば、会社の近くでも従業員のかかりつけの医療機関でもどこでも問題はありません。「法定の一般健康診断をお願いします」と言えば伝わることがほとんどですが、念のため項目については確認をしたほうが良いでしょう。

受診結果を把握する

健康診断の実施は事業主の責務です。健康診断の結果は重要な個人情報ですが、事業主はその結果を把握する必要があります。例えば個人で手配した従業員のかかりつけの医療機関での受診結果は提出してもらうなどをし、その結果は、5年間保管する義務があります。

大切な個人情報であるこれら健康情報に関する取扱については、2019年にその内容を策定した健康情報取扱規程を作成することがすべての事業主に義務付けられています。規程に沿って適切に取り扱いましょう。

最後に

人を雇用するうえで必要となる事業主の責務は、今回ご紹介した健康診断はもちろんのこと、労働者の働く環境の快適化や長時間労働を防ぐための労務管理なども大変重要な事業主の責務です。従業員は生身の人間であり、安全かつ健康に働いてもらえるよう事業主は配慮をすることは当然のことですし、気持ちの良い職場環境や労働条件を整備していくことは事業主の大切な役目です。

ではこれからどのようにすべきか、どこまで行うべきか?何から手を付けるべきか?お悩みがおありかと思います。今の御社のご状況をぜひ専門家である社会保険労務士へご相談ください。まずは顧問契約を結ばずにスポットの相談を活用してみませんか?いつでもご相談をおまちしております。

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この記事を監修した人

社労士

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