顧問料0円、完全スポット(単発)対応の社労士サービスはこちら

【社労士監修】労働保険料の年度更新の方法は?やり方と注意点を分かりやすく解説

しゃろねこ
しゃろねこ

事業主の皆様は、様々な税金や保険料を納めていらっしゃいますよね。決算の際には法人税や地方税、また社会保険に加入している場合には、毎月日本年金機構から社会保険料の納付書が届きます。では、労働保険料については、どうやって納付するかご存知でしょうか?

労働保険料は年に1回、6月1日から7月10日(※祝日等の場合は後ろ倒しとなる)の間に、事業主のみなさまご自身で労働保険料を計算して申告および納付をする必要があります。

国から今年の御社の労働保険料がいくらですよ、という連絡は来ません。

年に一度のことなので忘れてしまいそうですが、未納となれば大変なことになります。

今回は、年に1度の労働保険料の納付について、事業主は何をしなければならないのか、社会保険労務士が解説いたします。

年に一度の労働保険料の申告および納付について

年に一度の労働保険料の申告および納付、いわゆる「年度更新」ですが、まずは一般的なケースである事業の期間が予定されていない継続事業についての労働保険料の基本的な申告および納付方法を解説します。建設や立木の伐採などの有期事業に該当する業種の方は該当しないこともあるため、ご注意ください。

年度更新のしくみと大まかな流れ

労働保険料は前払い制度です。そして年度更新の時期に、その前払いをした分について正しい金額で計算をして精算をし、次の年の分についてはまた概算保険料を前払いするという制度です。

しくみ

・前年に概算で申告してある労働保険料について、最終確定した賃金額を基に確定保険料を計算し、前払いしている分との差額を精算する

・新たに、今年度分の概算保険料を計算して申告および納付をする

年度更新の例

  1. 概算保険料として、前年の年度更新では100万円を申告納付していた。
  2. 前年分の賃金総額から確定保険料を算出したら、110万円だった。
  3. 100万-110万=▲10万となり、前年の保険料は10万円が不足金額。
  4. 今年の概算保険料は、人員計画や給与などに特に変更予定がないので110万とした。
  5. 今年の概算保険料110万に前年の不足分10万円を足し、120万円を年度更新で申告、納付する。

年度更新の流れ

年度更新の手続きの大まかな流れとしては、以下の通りとなります。

前年度(昨年4月から今年3月までの1年間)の確定賃金総額を算出する
step1に、該当する保険料率をかけ、確定保険料を算出する
本年(今年4月から翌年3月末までの1年間)の概算保険料を算出する
労災分の確定保険料から一般拠出金を算出する
上記②③④をもとに、年度更新の申告書を作成
6月1日~7月10日までの間に、申告書を所轄の労基署や労働局、電子申請などで提出し、納付額があれば保険料の納付をする

労働保険料とは、労災保険と雇用保険の総称

労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせた総称として使われています。従業員を1名でも雇えば労災保険は適用されるので保険料を納付しなければなりません。雇用保険は週20時間以上働く人を雇った場合に加入させるきまりになっているので、該当者がいる場合は雇用保険料を納付しなければなりません。

例1)週2日合計10時間のアルバイトAを雇っている場合は?

→労災保険のみの労働保険料を納付する

例2)週2日合計10時間のアルバイトB、週4日合計20時間のアルバイトCを雇っている場合は?

→労災保険はアルバイトB,C分、雇用保険はアルバイトC分の労働保険料を納付する

労災保険料はどうやって決まる?

労災保険、雇用保険はそれぞれの料率表がありますが、いずれも対象となる賃金総額に対し該当する料率をかけることで算出します。

労災保険の料率について

労災保険料率は事業の種類により、2.5/1000~88/1000あり、労災保険率表に事業の種類ごとに細かく定められています。

労災保険は職場で事故等が起きた際や、通勤途中に労働者が負傷等した際に保険が給付される仕組みですが、事業の種類により労災保険料率が決められています。なぜ異なるかというと、労働災害が起きやすい業種とそうでない業種とでは、給付金が支払われる確率や頻度が違いますよね。あまり労災が起きない事業と起きやすい事業が同じ保険料率で保険料を徴収されるのは不公平となるから、といえばわかりやすいでしょうか。

例えば年収500万円の従業員をそれぞれの会社が雇っているとした場合、労災保険料の算出は、例えば不動産業では500万円x2.5/1000となりますが、鉱山などでダイナマイトを使用するような事業では500万円x88/1000となります。 「労災保険率表」と、会社の事業内容と一致しているかご確認ください。また、労災保険料は事業主のみが負担することとなっており、労働者の負担はありません。

雇用保険料の料率について

雇用保険料については労災保険料のように事業ごとに細かくはなっていません。なぜなら、事業の内容により失業がしやすいとか、しにくいということがあまりないからです。雇用保険の料率は一般の事業、建設の事業、農林水産業および清酒製造の事業と3つに分かれています。

雇用保険料については、事業主と労働者双方が負担することになっており、この合計を事業主が年度更新時にまとめて納付をします。労働者負担分は月々の給与支払い時に社会保険等と一緒に事業主が控除します。

令和5年度の雇用保険料率は、一般の事業であれば15.5/1000となります。

雇用保険料率は令和4年度に年度内で料率変更あり。

コロナ禍の緊急雇用対策として、雇用調整金など雇用保険料を財源とする助成金が多く使われたこともあり、雇用保険料の料率に変更が生じています。確定保険料の算出時にご注意ください。

令和4年4月1日~9月30日までは9.5/1000

令和4年10月1日~令和5年3月31日までは13.5/1000

よって、令和4年度の確定保険料の計算をする際は、賃金総額を前期と後期に分け、それぞれの期間に対応する保険料率で算出をする必要があります

労働保険料の対象となる賃金総額の算出期間はいつからいつまでの分なのか?

年度更新では、確定保険料と概算保険料を算出する必要がありますが、確定保険料であれば前年4月から今年の3月まで、概算保険料であれば、今年の4月から来年の3月までがその期間となります。集計は支払日ではなく、賃金締切日(支払い確定)ですることになります。

例)月末締め翌月20日支払いの場合

令和4年度の確定保険料は、令和5年4月20日支払い(令和5年3月末締め切り)分までが対象となります。実際に年度内に支払われていたものではなく、年度内に支払いが確定しているものが該当します。

労働保険料を算出する際の計算の基礎となる賃金総額について

賃金総額にそれぞれの労働保険料率をかけて労働保険料を算出しますが、千円未満の端数は切り捨てて計算をします。

また、労働保険料を計算する際には、賃金総額に含まれる賃金と、含まれない賃金があります。

賃金総額に含めるもの

・基本給・固定給等基本賃金

・超過勤務手当・深夜手当・休日手当等

・扶養手当・子供手当・家族手当等

・宿、日直手当

・役職手当・管理職手当等、地域手当住宅手当教育手当単身赴任手当技能手当特殊作業手当奨励手当物価手当調整手当、通勤手当休業手当

・賞 与

・いわゆる前払い退職金(労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされるもの)

・定期券・回数券等

・創立記念日等の祝金(恩恵的なものでなく、かつ、全労働者又は相当多数に支給される場合)

・チップ(奉仕料の配分として事業主から受けるもの)

賃金総額に含めないもの

・休業補償費

・退職金(退職を事由として支払われるものであって、退職時に支払われるもの又は事業主の都合等により退職前に一時金として支払われるもの)

・婚祝金死亡弔慰金災害見舞金増資記念品代私傷病見舞金、年功慰労金

・解雇予告手当て(労働基準法第20条の規定に基づくもの)

・出張旅費・宿泊費等(実費弁償的なもの)

制 服

・会社が全額負担する生命保険の掛金

・財産形成貯蓄のため事業主が負担する奨励金等(労働者が行う財産形成貯蓄を推奨援助するため事業主が労働者に対して支払う一定の率又は額の奨励金等)

・住居の利益(一部の社員に社宅等の貸与を行っているが、他の者に均衡給与が支給されない場合)

・雇用保険料その他社会保険料(労働者の負担分を事業主が負担する場合)

・住居の利益(社宅等の貸与を行っている場合のうち貸与を受けない者に対し均衡上住宅手当を支給する場合)

労働保険の対象とならない方の役員報酬等の誤算入にも注意

労災保険では代表権・業務執行権を有する役員など、雇用保険では法人における取締役などは労働保険の対象とならないため、賃金総額には含めません。

概算保険料に用いる賃金総額について

概算保険料は、今年度の労災保険および雇用保険に該当する賃金総額をそれぞれ算出して、その年度の労災保険料率と雇用保険料率をかけて算出しますが、この賃金総額は任意となります。おおよその金額で算出することで問題はなく、大きな差がなければ昨年と同額の賃金総額を用いて算出しても構いません。

一般拠出金

一般拠出金は厳密にいうと労働保険料ではありませんが、「石綿による健康被害の救済に関する法律」の規定に基づき、労災保険の対象となる事業主の皆様が負担するものです。徴収された一般拠出金は、国からの交付金、地方公共団体からの交付金、特別事業主(アスベスト の製造、販売を行ってきた事業主)からの特別拠出金と併せて、石綿(アスベスト)健康被害者(労災 補償の対象にならない方)の救済費用に充てられます。

労災保険に該当する確定保険料にのみかかり、一般拠出率は0.02/1000となります。

労働保険料申告書の記載について

確定保険料、概算保険料、一般拠出金が算出できたら、労働保険料申告書に記載をしていきます。労働保険番号、常時使用する労働者数や雇用保険が適用となる労働者数などを記載してきます。用紙は年度更新の時期になれば送付されますが、労基署や労働局にも用紙がおいてあります。

また、概算保険料が40万円(労災保険と雇用保険のどちらか一方が成立している場合は20万)を超える場合は、3回に分けて納付することが可能です。1回なのか3回なのか、チェック欄にチェックを入れて3で割った金額をそれぞれ記入します。端数が生じる場合は、必ず第一期分の納付額に含めてください。

一つの会社で支店などがいくつもある場合

一つの会社で支店や営業所等がある場合は、それぞれの場所ごとに保険関係を成立させた上で、 労働保険料を申告・納付することとなります。  

ですが、事務処理の便宜と簡素化を図る観点等から、一定の要件を満たす同業種の支店や営業所等については、これらの労働保険料の申告・納付等の適用・徴収事務手続について、一つの事業にまとめることができる制度があります。

「継続事業の一括」という制度ですが(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第 9 条)継続事業一括の要件を満たす場合はまとめて労働保険料の申告と納付が可能となります。  事業主(法人の場合は同一法人の支店、営業所等に限る。)が同一であること、それぞれの事業が、継続事業であること、保険関係が成立していること、それぞれの事業が、「労災保険率表」による「事業の種類」が同じであること、などが継続事業の一括が出来る要件となります。

労働保険料申告書の提出と保険料の納付について

  • 紙の用紙で届出をする場合

申告書は、納付額があれば金融機関で提出と納付が同時に行えます。その場合は申請書を切り離さずにそのまま銀行等へ提出し納付の手続きを行います。

労基署や労働局へ申請書を提出した場合は、保険料の納付は労基署や労働局では行えませんので、別途金融機関で納付のみの手続きをします。

  • 電子申請をする場合

年度更新は電子申請でも申告ができます。その場合、保険料は電子納付(ペイジー)が可能です。

電子納付は、電子申請以外でも3回に分けて延納をする場合には、2回目以降は電子納付(ペイジー)が可能となります。

  • 口座振替で納付をする場合

あらかじめ、口座振替の手続きをしている場合は労働保険料の申告書の提出のみすれば、口座振替により納付が出来ます。

労働保険料の納期限(令和5年度の場合)

  • 全期分(分割納付しない場合)および分割納付の1期目分は令和5年7月10日
  • 分割納付の2期目分は令和5年10月31日
  • 分割納付の3期目分は令和6年1月31日

口座振替で納付する場合は、上記納期限が以下となります。

  • 令和5年7月10日→令和5年9月6日
  • 令和5年10月31日→令和5年11月14日
  • 令和6年1月31日→令和6年2月14日

※口座振替を希望する場合は、前もって申し込みをしておく必要があります。

年度更新をしないとどうなるのか?

年度更新をしないということは、労働保険料が未納ということになります。その場合の労働者と事業主に対するリスクについてお伝えします。

労働者に対するリスクについて

労働者が負担するのは労働保険料のうち雇用保険のみです。本人の毎月のお給料から控除されていることが給与明細等で確認できるのであれば、失業等した場合の手当は支給されます。また業務上の災害などにあった場合の労災補償もされます。

事業主に対するリスク

  • 延滞金が徴収されます

労働保険料を滞納しますと、法定納期の翌日を起算日として、年率14.6%の延滞金が課せられます。

  • 給付額の40%相当額を限度に費用が徴収されます

例えば事業主が労働保険料を滞納中に、労働者が業務上で負傷し給付を受けた場合には、給付額の40%相当額の限度として、労働保険料とは別に事業主から徴収をすることとなります。

給付額が大きければ、事業主が請求される額も当然に大きくなり、何百万単位になることもあり得ます。

  • 滞納処分が行われます

労働保険料を滞納しますと、財産の差し押さえ等の滞納処分が行われることがあります。

  • 助成金が受けられない

労働保険料を滞納すれば、助成金の支給対象外となります。

  • 入札資格などに必要な納入証明が発行されない

「納入証明」は「保険料の未納がないことの証明」です。労働保険料が完納されていないと、「入札参加資格」や「経営事項審査」等に必要な「労災・雇用 保険料納入証明書」が交付できません。

事業主が事前に整備しておきたいこと

年度更新は毎年6月1日から7月10日の間に行う決まりがありますが、この時期は労基署も労働局も大変込み合いますので、出来る限り早めに着手してしまいましょう。おすすめは5月のゴールデンウィーク明けから、昨年の賃金台帳を揃え、確定保険料と概算保険料などの算出を終わらせておくことです。賃金台帳は提出する必要はありませんが、きちんと調整出来ているかどうか、間違ってないかどうかを確認することが必要で、もし間違っていた場合はその修正などにも時間を要します。年度更新の申告は5月中にはできませんが、スムーズな年度更新のためにも、早めに着手することが望ましいですね。

さいごに

年度更新は年に1回の作業となるため、どうやるのかを毎年思い出すことに頭を悩ませる事業主の方も多いのではないかと思います。また、昨今は雇用保険料率の変更などが異例にも年度内で起こるなど法改正もありました。そういった変化について行政はきちんと周知してはいますが、仕組みが複雑になっている年もあり、分かりにくいことがあるのも事実です。年に一度の年度更新をしっかり覚えておくこと自体がお忙しい事業主の皆様には非効率なことと思いますので、このような手続きこそ、顧問契約を不要とするスポット手続きを活用されてはいかがでしょうか?賃金台帳のつけ方や社会保険の手続きについてのチェックも同時にご依頼下さればさらに安心ですね。もちろんご希望があれば顧問契約も対応しております。ぜひご検討ください。

社会保険の手続きを顧問料なしのスポット(単発)で行うなら

・社労士Cloudなら「年度更新」を顧問料なしのスポット(単発)で簡単かつ迅速にお手続きできます。こちらからお問い合わせください。

この記事を書いた人

社労士Cloud

社労士Cloud

https://sharoushi-cloud.com/

全国のあらゆる社会保険手続きをスポット(単発)で代行するWebサービス【社労士Cloud】の運営者| 超絶早い・メチャ安い・懇切丁寧が売りです| 750社以上の企業様や全国津々浦々の税理士先生にご利用頂いております| Web・電話・公式Line・Chatwork・対面で手続き即日完結|顧問契約も可能