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【社労士監修】障害年金についての基礎知識/申請に必要な書類とは?

業務外の病気やケガで働けなくなった場合に、健康保険から支給される傷病手当金がありますが、支給される期間は支給を開始した日から通算して最大1年6か月となります。

もし、その期間が過ぎても働くことができない場合や、働くことに制限が生じた場合はどうしたらいいでしょうか?

一定の要件に該当する場合、障害年金の請求をして認定されると、障害年金を受けることができます。

どのような仕組みになっているのか、どんな場合に障害年金を受けることができるのか、社労士が解説いたします。

障害年金には国民年金と厚生年金と2つの公的年金がある

国民年金

日本は国民皆年金制度として国民年金という公的年金があります。対象は日本に住んでいる人が対象となり、20歳から60歳までは強制加入となります。また、日本国籍は要件とはされないので、外国籍の方でも所定の要件を満たす場合は国民年金に加入することとなり、保険料の納付をします。お住いの市町村役場が窓口となり、納付や年金についての相談を行うことができます。

厚生年金保険

一方で、厚生年金保険は、日本の被用者(いわゆる会社員)の方向けの公的年金であり、国民年金に同時加入(国民年金2号被保険者になります。被扶養配偶者は国民年金3号となります)となり、国民年金に上乗せされるものです。加入手続きは、事業主が所轄の年金事務所で行い、保険料の納付は事業主が労使分をまとめて行います。被用者は事業主からの給与から社会保険料控除という形で保険料の納付を行います。

年金の種類は3つ

  • 老齢年金   一定年齢に達した時
  • 遺族年金   死亡により遺族が働き手を失った時
  • 障害年金   障害などにより生活や働くことに支障が生じたとき

それぞれのきっかけやご自身の保険の加入状況に応じて、どの制度からどの年金が支給されるかが決まります。たとえば、国民年金に加入している時に障害を負った場合は「障害基礎年金」。厚生年金保険に加入している時に障害を負った場合は、「障害厚生年金」となります。年金というと年を取ったらもらうもの、とイメージされる方も多いですが、若い世代でも、要件を満たせば支給を受けることができます。

障害年金に関する誤解

「障害者手帳」を持っていなくても障害年金の請求は可能

障害者手帳がなければ障害年金がもらえないと思っている方は多いですが、それは誤解です。障害年金の受給要件の中に、「障害者手帳〇級の方」という文言はありません。また、障害者手帳1級だから障害年金も1級というわけでもありません。

障害者手帳は障害者支援法が根拠法令であり、お住いの市町村役場で発行されるもので、交通サービスや税金等の軽減などを受けることができます。一方で障害年金は国が運営している制度となります。

働いていても、収入があっても、障害年金を受給することは可能

障害があることにより、日常生活や就労にどのような支障があるのかで、障害年金に該当する障害の状態であるかどうかが決まります。「働けたら年金がもらえない」という文言の記載もありませんし、二十歳前障害年金以外は収入要件もありません。

障害年金を受けられる条件とは?

国が定める「障害の状態」に該当していること

障害年金が支給される障害の状態に応じて、国民年金法施行令別表や厚生年金保険法施行令別表第1に、様々な「障害の程度」が定められています。

例えば聴覚や視覚などには障害の程度として具体的な数字の記載があるものもありますが、数字で表せないような障害の状態も中にはあります。例えば、「重度の自閉症だから1級」と決まるものではなく、以下の障害の状態であると認められるかどうかで、年金が受けられるかどうかが決まります。

障害年金に該当する「障害の状態」とは
  • 障害の程度1級

他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態で、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方

  • 障害の程度2級

必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方

  • 障害の程度3級(厚生年金保険のみ)

労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方

そのほか、厚生年金保険には、障害手当金があります。もし障害年金1~3級に該当しない軽い障害でも、一時金を受けることができる可能性もあります。

具体的には、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金として報酬比例(障害厚生年金3級)の2年分)が支給されます。

障害年金を受給するための3つの要件

1、初診日

障害の原因となった病気やけがの初診日に、対象者が以下のいずれかに該当する

  • 国民年金もしくは厚生年金に加入している
  • 20歳前である
  • 日本国内在住で60歳以上65歳未満である

初診日とは?

障害または死亡の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります。

2、障害認定日

障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること(障害厚生年金は1~3級まで。)

障害認定日とは?

障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。

3、保険料納付要件

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

二十歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要

障害年金は初診日に国民年金か厚生年金保険に加入していないと支給の対象にならないというルールがあります。先天的な障害、たとえば幼少期に知的障害があると診断された場合などは、初診日にいずれの保険にも加入していないことになりますが、その場合は、国民年金のみにある二十歳前障害年金の支給対象となります。この二十歳前障害年金のみ保険料納付要件はありません。

年金の支給額(令和4年4月~)※1年間の額

障害基礎年金の支給額

障害基礎年金は定額となります。

1級は、972,250円+子の加算額※

2級は、777,800円+子の加算額※

子の加算額については、2人目まで 1人につき223,800円、3人目以降 1人につき74,600円となります。

※子の加算額はその方に生計を維持されている子がいるときに加算されます。
なお、子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子です。

※令和5年2月現在

障害厚生年金の支給額

1級は、(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(223,800円)〕※

2級は、(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(223,800円)〕※

3級は、(報酬比例の年金額) 最低保障額 583,400円

注意事項

報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。

※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。

ただし、配偶者が老齢厚生年金等を受け取る権利があるとき、または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。ただし、以下の1および2の要件を満たす場合については、令和4年4月以降も引き続き加給年金の支給を継続する経過措置が設けられています。

1.令和4年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている

2.令和4年3月時点で、加給年金額の対象者である配偶者が、厚生年金保険の被保険者期間が240月以上ある老齢厚生年金等の受給権を有しており、全額が支給停止されている

※令和5年2月現

初診日にどの保険に加入しているかで、年金額は変わる

・初診日に、20歳未満、または、国民年金に加入中あるいは65歳未満で日本に住んでいるときは、障害の状態が1級または2級に該当すれば「障害基礎年金」が支給されます。障害の状態が3級に該当する場合は年金の支給はありません。
例:1級に該当し、加算対象となる子がいる場合は以下のようになります。

「1級の障害基礎年金」+「子の加算」

注意事項

※障害基礎年金は配偶者の加算はありません。

・初診日に、厚生年金に加入していて、65歳未満で、障害の状態が1級または2級に該当すれば、「障害基礎年金と障害厚生年金の両方」が支給されます。障害の状態が3級に該当する場合は、障害基礎年金に3級はないので、「障害厚生年金のみ」です。


例:1級に該当し、加算対象となる配偶者と子がいる場合は以下のようになります。

(「1級の障害厚生年金」+「配偶者の加算」)+(「1級の障害基礎年金」+「子の加算」)

請求に必要な書類

障害年金を請求する際は、原則、以下の書類を準備します。障害年金は本人の面談などはなく書類のみで支給が決まります。

  1. 裁定請求書
  2. 障害の状態に関する医師の診断書(障害認定日より三か月以内)
  3. 受診状況等証明書(初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため)
  4. 病歴・就労状況等申立書(障害状態を確認するための補足資料)
  5. ご自身の生年月日を明らかにできる書類
  6. 基礎年金番号がわかるもの
  7. ご自身が年金を受ける金融機関の情報がわかるもの(通帳のコピーなど)
  8. 配偶者や子の加算がある場合は戸籍謄本などの書類

これら書類はお住いの市町村役場や年金事務所にあり、また日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。

提出先はどこになるのか

障害基礎年金を受けられるときは、お住いの市町村役場の窓口

障害厚生年金を受けられるときは、お近くの年金事務所

いつ請求すると、いつ支給開始するのか

請求は障害認定日の翌月より可能ですが、遡及して受けられるのは時効により5年までになります。請求の方法は3つのパターンがあります。

1.本来請求 障害認定日より1年以内に請求をする場合

→障害認定月の翌月より支給開始

2.遡及請求 障害認定日より1年を超えてから請求をする場合

→障害認定月の翌月より支給開始(時効消滅していない最大5年分)

3.事後重症 障害認定日には障害等級に不該当だったが、それ以降65歳までに障害に該当した時に請求する場合(請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。)

→請求月の翌月から支給開始

どういうタイミングで年金は支給されるのか

障害年金は年6回、偶数月(2月、4月、6月、8月10月12月)に2か月分がまとめて支給されます。

初回に限り以下のルールにより支給日が決まるため、初回のみ奇数月に支給されることがあります。

年金証書に記載のある裁定日が

月の前半の場合は、翌月の15日

月の後半の場合は、翌々月の15日

2回目以降については、例えば10月11月分が12月15日にご本人の口座に振り込みされます。

注意事項

※いずれも15日が祝日だったら前倒しで支給されます。

支給停止や減額はあるのか?

・障害年金の支給決定には、永久認定と有期認定があります。有期認定の更新時に「障害状態確認届」を提出しますが、審査の結果、障害の状態が軽減したと判断された場合に支給停止となることがあります。

・年金額全体の増減

年金制度は100年安心して続く制度とするために、物価や賃金の変動に年金額も対応させる仕組みで運用されています。基礎年金の推移として(月額)、令和3年度は65,075円、令和4年度64,816円、令和5年度66,250円(新規裁定者)となっています。

このような仕組みで年金額は毎年改定されるため、年金額に増減が生じることはあります。

二十歳前の障害年金のみ、保険料納付要件を求められないことから、以下のような支給停止や調整などがあります。

・収入要件で停止する場合

本人の前年の収入が4,721,000円を超えると全額支給停止、3,704,000円を超えると半額支給停止となります。

・他制度から年金等を受けている場合

恩給や労災保険の年金等を受給しているときは、その受給額について障害基礎年金の年金額から調整されます。恩給や労災保険の年金等を初めて受けるようになったときは、「国民年金受給権者 支給停止事由該当届」の提出が必要となります。また、恩給や労災保険の年金等の金額に変更があった場合も、「国民年金障害基礎・遺族基礎年金受給権者 支給停止額変更届」の提出が必要となります。

・海外に居住したときや刑務所等の矯正施設に入所した場合

この場合は、年金の全額が支給停止されます。なお、矯正施設に入所している場合でも、有罪が確定していなければ支給停止とはなりません。海外に居住したときや刑務所等の矯正施設に入所した場合は、「国民年金受給権者 支給停止事由該当届」の提出が必要となります。

生活保護との違い

日本国憲法では、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しています。生活保護を支給されるには、以下のすべての条件を満たす必要があります。

  • 資産(預貯金や車、家屋など)を持っていない
  • 病気やけがなどで働くことができない
  • 親族からの支援を受けることができない
  • 生活保護以外に利用できる公的制度がない

また、生活保護受給中にも様々な制約がありますが、障害年金にはそのような制約はありません。もらった年金を何に使うのかを問われることはありません。

さいごに

事業主の方も従業員の方も、社会保険は、保険料が高く頭が痛いものと思われることも多いでしょう。もし、初診日に厚生年金に加入しているなどの要件に該当する場合、障害の状態が3級に該当すれば障害厚生年金が支給されます。国民年金は3級では年金支給がありません。障害年金をもらうことが出来れば、以前とは違う働き方をしながら生活することもできます。障害年金がないため「収入がないから働かなければ」と無理をして働き、症状を悪化させることもあります。障害年金は障害の状態に該当し、受給要件を満たせば貰えるものです。

事業主の方には、社会保険は健康保険と老後の年金だけではなく、老齢以外の障害や死亡などがきっかけで現役世代でも年金が支給される場合もあるとご理解いただき、「もしものきっかけのために、従業員には社会保険に加入してもらおう」と積極的に従業員の皆様への社会保険加入を促進して頂ければと思います。

この記事を書いた人

社会保険労務士事務所Eclat代表

下郷 暁子

しもざと あきこ

https://www.akikoshimozato.com

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