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【社労士監修】会社を廃業する際の社会保険手続きについて

昨今の日本では、もう起業すること自体は特に珍しいことではなくなり、また、簡単に会社設立できるwebサービスも増加しているので、起業をすることに対するハードルは年々低くなっていると言えます。またⅯ&Aなど会社の統廃合も増えており、会社を設立するだけではなく会社を廃止することも多く見られます。

今回は、事業主が「人を雇用している事業主が、廃業する時」に、どんな手続きをしなければならないのか、何に気を付けなければならないのかを、ご説明します。

廃業とは

会社を廃業することは、事業主が自らその事業を廃止することを言います。廃業をすることに対して理由は特に定められていないため、売り上げ不振や事業主が高齢で後継者がなく存続が不可能などの理由や、売り上げがあり利益が出ていたとしても、事業をたたむことを選択する場合も中にはあると思います。

事業を廃止するためには、様々な段階を経て清算や手続きを行う必要があります。

また、人を雇用している事業主であれば、事業を廃止することは、事業主の都合で労働契約を終了させることとなります。労働者に対する説明や手続きなどが労働基準法や労働契約法に定められていますので、事業の廃止に対する説明をしっかり行わないことで、思わぬ労使トラブルとなる場合もあります。

事業の廃止による労働契約の終了は「整理解雇」と認められる

事業主と労働者の間で、労働契約を終了する場合はいくつかあります。
その種類については、おおまかには以下へ分類されます。

合意解約・・・労使双方の合意のもと労働契約を終了すること

辞職・・・労働者の一方的な申し出により労働契約を終了すること

解雇・・・使用者の一方的な申し出により労働契約を終了すること

解雇については、労働契約法第16条に、解雇事由が客観的合理性を欠き社会通念上相当と認められない場合は、解雇権濫用として無効となる旨が定められています。解雇については、

普通解雇(整理解雇を含む)、懲戒解雇などがあり、事業の廃止による労働者の解雇については、「整理解雇」と認められることとなり、整理解雇には以下すべての要件が求められます。

整理解雇に求められる要件

・人員削減の必要性

・解雇回避の努力

・人選の合理性

・解雇手続きの妥当性

労働者に事業の廃止について伝える【解雇の30日前が期限】

事業の廃止の手続きを進めていくにあたり、労働者へ整理解雇となる旨を伝えなければなりませんが、その際に労働基準法第20条「解雇の予告」に則って進めていかなければ労働基準法違反となります。

まず、使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。事業の廃止に伴う整理解雇をする場合、労働者へ解雇予告通知をすることが必要ですが、説明会を行うことや個別面談などがあります。

また、30日に満たない日数で解雇する場合は、不足する日数分の賃金を支払う必要があり、これを「解雇予告手当」といいます。解雇予告手当の計算については原則は以下の通り平均賃金を用いて計算をします。

平均賃金 = 直近3か月に労働者に支払われた賃金の総額 ÷ その3か月の歴日数

その他、労働条件通知書か雇用契約書、就業規則などに記載のある事業主の支払い義務のあるものはすべて清算をします。

雇用保険、社会保険、労働保険料の精算などの手続

事業の廃止に伴い、雇用保険、社会保険、労働保険料の精算などの手続きが必要となります。
添付書類のことを考えると、以下の順番で行うことが効率的だと言えます。

1)雇用保険の手続き

事業を廃止や休止(休業)する場合や、他の事業に合併される場合、雇用する従業員がゼロになり今後も雇い入れの見込みがない場合、以下を10日以内に所轄のハローワークへ提出します。

・雇用保険適用事業所廃止届

雇用保険被保険者資格喪失届

・雇用保険被保険者離職証明書(労働者に求められた場合)

2)社会保険の手続き

事業を廃止や休止(休業)する場合や、他の事業に合併される場合、以下を5日以内に年金事務所等保険者へ提出します。

・健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

原則、解散登記の記入のある法人登記簿謄本のコピーか、雇用保険適用事業所廃止届の添付が必要となります。それらがない場合は、税務署に提出する給与支払事業所廃止届など、事業の廃止が確認できる書類の添付が必要となります。

・健康保険・厚生年金保険被保険者喪失届

労働者及び被扶養者の健康保険証の返却も必要となりますので、必ず回収しておきましょう。

3)労働保険料の精算

労働保険料は、4月1日~翌3月31日までの分を、7月10日までに概算保険料として申告及び納付をしています。事業の廃止をする場合は、確定した賃金総額を基に、確定保険料の計算をして申告することになります。

・労働保険確定保険料申告書

事業の廃止等から50日以内に、所轄の労働基準監督署所轄、都道府県労働局または日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行、信用金庫の本店または支店、郵便局)を含む)に提出します。

・労働保険料還付請求書

もし、確定保険料が、概算保険料よりも少ない場合は、同時にも所轄の労働基準監督署または都道府県労働局へ提出をします。

労働者へ各種保険の説明について

会社の廃業に伴い離職する労働者に対し、離職後の保険手続きについて説明をし、自ら手続きを進めるように伝えます。

1)雇用保険について

労働者がすぐに再就職などしない場合は、会社から離職票を受け取ったら、お住まいのハローワークへ手続きに向かうように伝えます。

雇用保険に加入していた労働者が離職した場合、雇用保険から失業給付を受けることができ、離職理由が事業の廃止など事業主都合の場合は、離職理由が自己都合による退職とは異なる、「特定受給資格者」と認められることとなります。

自己都合による退職者が、最大でも150日分の失業給付を受けられるところ、特定受給資格者であれば最大で240日分の失業給付が受けられることとなります。(年齢など要件により変わります)

また、離職理由が自己都合による退職であれば、ハローワークに離職票を提出してから7日間の待機の後、更に3か月間の給付制限期間があり、この間は失業給付を受けられません。ですが、特定受給資格者と認められた場合は、7日間の待機の後は、給付制限期間なく失業給付が受けられます。

また、失業給付を受けられる条件である被保険者期間についても、自己都合による退職の場合は過去2年間に被保険者期間が通算して12か月以上なければなりませんが、特定受給資格者では、過去1年間で被保険者期間が通算して6か月以上あれば、失業給付が支給されます。


2)健康保険について

労働者が離職後すぐに別の会社に再就職する場合は、その会社の社会保険に加入することとなるので、新しい会社で手続きをしてもらえれば、特に自分で行う手続きなどはありませんが、一方で、しばらく仕事に就けないなどの場合は、退職後の健康保険については2つの選択肢があります。

これまで加入していた保険者で任意継続するパターン

資格喪失日の前日までに、健康保険の被保険者期間が2か月以上ある場合は、これまで加入していた健保組合やお住いの所轄の年金事務所に退職後の翌日から20日以内に、任意継続被保険者資格取得申請書を提出することで、被保険者として加入することができます。この20日以内という期日は非常に厳密に定められていますので、期日を過ぎてしまうと加入することができません。

また、任意継続被保険者の保険料は基本的には前払いとなり、毎月の保険料は月初めに送付される納付書で、その月の10日までに納付することとなります。納付ができないと納付期日の翌日で資格喪失することとなります。また、初回の保険料の納付期日については、保険者の指定した日となります。また、初回の保険料が納付期限までに納付されないときは、資格取得がなかったものとみなされます。

保険料はこれまでの会社負担分を本人がすべて負担をすることとなります。また、保険料は資格喪失時の標準報酬月額を基に決まりますが、平均標準報酬月額のほうが低い場合はそちらを適用することもありますので、詳しい保険料については、任意継続予定の保険者へお問い合わせください。また、要件に該当する場合は被扶養家族の加入も引き続き可能です。

お住いの市町村で国民健康保険に加入するパターン

お住いの市町村の国民健康保険窓口で、退職日の翌日から14日以内に加入の手続きを行います。保険料は1月から12月までの前年の所得に応じて決定され、翌6月頃に届く納付書で納付をしていきます。

国民健康保険には扶養という概念がありませんので、社会保険のように扶養者に対する保険料がかからないということはありません。家族が増えれば保険料は増えるという仕組みになっており、納付義務は世帯主が負います。

国民健康保険では、事業の廃止など非自発的な理由による離職については、国民健康保険料の軽減措置があります。前年度の所得金額を、本来の所得金額の30%に置き換えて保険料が計算される制度で、期間は離職年月日の翌日が属する年度の翌年度末(3月31日)までです。こちらも同じく国民健康保険窓口にて申請書を提出します。

3)厚生年金について

厚生年金については、健康保険のような任意継続の制度はないため、これまでの厚生年金から国民年金への切り替え手続きを行う必要があります。お住まいの市町村の国民年金窓口にて退職日の翌日から14日以内に手続きをします。また、社会保険で被扶養配偶者だった方についても同様の手続きをし、今後は保険料の納付が必要となります。この手続きをし忘れてしまうと保険料未納となってしまい、そうなれば年金受給ができなくなることもありますので、手続きは忘れずに行う必要があります。

退職後の各種保険加入については、その方の状況に応じて、労働者自身で行う手続きがほとんどではあります。一方で事業主が何もしなくてもいいわけではなく、一定数の離職者が発生する場合は、労働条件総合推進法第24条により、再就職援助計画を作成し、ハローワークへ提出しなければならないなど、事業主にも労働者に対して再就職など援助をする義務が発生する場合もあります。

いかがでしたでしょうか?

事業の廃止に伴う手続きについてご説明しましたが、ご理解頂けましたでしょうか。

事業の廃止の理由は様々ありますが、どんな理由であれ労働者にとって突然の離職は生活の柱を失う大きな問題です。万が一そうなった時に、雇用保険に加入していたことで失業給付がすぐに受けられ、それにより生活が支えられることや、健康保険の任意継続制度で扶養家族を含め健康保険から変わらず療養給付が受けられるなど、これまで事業主と労働者が共に加入していた様々な保険が、労働者を守ってくれることとなります。

事業主の皆様には、これまで通り、適正な保険加入の手続きの重要性について、ご理解いただけますよう、お願いいたします。

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この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

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